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19世紀と21世紀のレクイエム
BrahmsのEin Deutsches Requiem(ドイツレクイエム)を聴きに、カーネギーホールへ。Saint Louis Symphony OrchestraおよびSaint Louis Symphony Chorusによる演奏で、前半が米国人作曲家John Adamsの"On the Transmigration of Souls"、後半がドイツレクイエム。

"On the Transmigration of Souls"は、とにかく衝撃的。9/11をテーマに、テロの数ヶ月後に作曲された音楽で、ステージにものすごい数のオーケストラ、コーラス(子供の合唱団も)が勢ぞろいしている中、なんと、「日常生活の音(人の足音とか話し声とか救急車の音とか)」がいきなりスピーカーから流れ出すのだ。

と、思ったら、"Missing.... Missing.... Missing...."という不気味な人の声。続いて、人の名前がスピーカーから繰り返される。いつのまにか、音楽もコーラスも始まっている。この、Missing(行方不明者)と人の名前は、9/11のあとあちこちに貼られた、テロに巻き込まれた人を探すポスターに書かれていたもの。そして、合唱の歌詞は、テロで亡くなった人の遺族の言葉。「母は言う、『息子は毎日私に電話をくれていた。私は今も待ってる』」といった具合に。

とにかく衝撃で固まってしまうような音楽だった。私の周りの人も、演奏が終わってしばらくしてやっと、「また起こらないことを祈るばかりね」とそっとささやきあっていた。もう少しでテロから5年。普段忘れ去られているようにすら感じる恐怖や悲しみは実際は時間が経っても消えない。この音楽はまさに21世紀のレクイエムだ。

前半の30分でですっかり疲弊してしまったけれど、後半のドイツレクイエムも本当に素晴らしかった。合唱はほぼ2時間歌いっぱなしだというのに、男声が特に素晴らしく安定していて、最初から最後まで本当にパーフェクトだった。
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by e3ny | 2006-04-02 15:47 | NY生活-Life